
胃がんは日本人に最も多いがんで、早期に発見されることが多くなっています。
早期胃がんの根治率は90%以上と治る可能性が高いがんの一つです。 進行がんであったとしても手術でリンパ節の転移をしっかり切除すれば根治の期待ができると言われています。
また、胃がんの薬物療法も進歩しており、切除が難しいがんに対して効果のある抗がん剤が新たに承認されるなど治療の選択肢が増え、 さらに分子標的薬のようながん細胞にある分子を標的にした薬剤で、正常な細胞へ与える副作用を最小に押さえた薬剤の開発も進んでいます。
症状

胃がんの発生初期には自覚症状を感じることはほとんどありません。
胃がんが広がり、胃液の分泌や消化活動を障害するようになると、上腹部の痛み、吐き気、不快感、げっぷの頻発といった症状がときどきあらわれます。 これに加え、噴門部(胃の入り口付近)にがんがあると、食物のつかえる感じや胸焼けが、 幽門部(胃の出口付近)にできると胃の内容物が停滞し、胃がもたれる感じや腹部膨満感、吐き気や嘔吐などの症状が多く見られます。
そのまま治療せずにいると、次第に食べることが苦痛となり食欲不振となり、食事摂取量の低下による体重減少なども起こります。 また、がんの浸潤によって胃壁の組織が壊れ出血すると貧血や脱水、めまいやふらつきが現れたり、 胃壁に穴が開いて酸性度の強い胃液を含む内容物が腹部内に漏れ出ると腹膜炎や他の腹部臓器の炎症を引き起こします。
直径2cm以下で粘膜の浅い部分にある早期がんであれば、短期入院で食事などの制限も比較的軽い内視鏡による手術で取り除くことが可能です。
胃がんは、健康診断などで症状が出現する前に発見、または初期症状のうちに治療をすることで治る可能性が極めて高いがんです。
診断と検査
下記のような検査を行い、がんの状態を診断し、治療方針を判断する材料とします。
胃X線検査(胃透視) | : バリウムをのんで胃の形や粘膜の状態や変化をX線写真で確認します。発泡剤で胃を膨らませて行います。 内視鏡治療を行う場合など、省略されることもあります。 |
上部消化管内視鏡検査 | : 胃の内部を直接見て、がんがうたがわれる病変の位置や広がり(範囲)、深さ(深達度)を調べる検査です。 病変があれば、内視鏡の先から針のような器具でその組織のごく一部を採取する生検を行い、病理診断をすることもあります。 |
腹部超音波(エコー) | : 胃がんと周囲の臓器の位置関係、がんの転移の検索を行います。 |
CT(胸腹部) | : 肝転移、肺転移の検索や浸潤の検索のために行う検査です。 この検査により病期(ステージ)が決定され、手術の術式を含め治療方針が決定されます。 |
MRI | : 磁気を利用した検査です。CTと同じように横になってドーム状の機械に入って撮影します。 CTと異なるのは、体の輪切り(横断面)の写真だけでなく、縦断面の写真も撮ることができることです。 微小肝転移の検索や、胃がんの周囲臓器への浸潤の状況などを診断するのに適しています。 |
PET | : がん細胞ではブドウ糖代謝が亢進しているという性質を利用して、放射性のフッ素を含む薬剤を静脈注射し、 その取り込みの分布を撮影することで全身のがん細胞を検索します。超音波検査、CT、MRIなどで診断が難しい場合、 腫瘍マーカーなどの異常から転移や再発が疑われる場合などには、PETで検査することもあります。 |
病期(ステージ)分類
病期(ステージ)とは、がんの進行の程度を示す言葉です。胃がんでは病理検査(生検)による確定診断と、内視鏡検査や腹部CT検査、腹部超音波検査などの結果から 総合的に評価・判定し、Ⅰ期(ⅠA 、ⅠB)、Ⅱ期(ⅡA,ⅡB)、Ⅲ期(ⅢA、ⅢB、ⅢC)、Ⅳ期の8段階に分類します。 胃がんの進行の深さ(進達度)、リンパ節への転移や、他の離れた臓器への転移(遠隔転移)などの要素を組み合わせ病気を判断します。


治療
胃がんの治療法は病期(ステージ)に応じて異なります。

内視鏡的治療 | : ⅠA期(粘膜下層への浸潤が軽いがん)に対しては内視鏡を使って胃の内側からがんを切除します。 病変の状態により内視鏡的ポリープ切除、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が行われます。 ※内視鏡的治療については消化器内視鏡センターにて施術します。 |
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手術治療 | : 胃がんでは手術が最も有効で標準的な治療です。胃を切除すると同時に決まった範囲の周囲のリンパ節を取り除く「リンパ節郭清」を行います。 手術の方法は、治癒を目的とした治癒手術と、治癒が難しい場合に症状緩和などを目的とした非治癒手術とがあります。 がんが周囲の臓器に及んでいる場合には、それらの臓器も一緒に切除することがあります。 ●胃がんに対する手術
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化学療法 (抗がん剤治療) |
: 抗がん剤は癌を縮小したり、増大を抑えたり緩やかにする作用をもっています。 胃がんでは主に術後の再発を予防するために手術後に一定期間行う「術後補助化学療法」と、手術では切除しきれない場合や再発した場合に行う化学療法の二つがあります。 近年、化学療法の進歩は目覚しく、胃がんを完全に治すことが難しい場合でも、がんの進行を遅らせ、元気に生活できる期間も長くなってきています。 |
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