胆嚢結石の治療
胆嚢結石症とは
肝臓では胆汁という消化液が作られ、胆管を通って十二指腸へと流れていきます。 その胆管の途中に胆嚢という袋があり、胆嚢の一部は肝臓に付着しています。胆嚢は胆汁を一旦貯留・濃縮し、食べ物の刺激で溜まった胆汁を十二指腸に流す働きをしています。 なお、胆嚢を切除してもほとんどの方は食事制限の必要もなく、日常生活も手術前と全く変わりなく過ごすことができます。
その胆嚢内にコレステロールなどが石のように固まった状態を胆嚢内結石(または胆石症)と呼びます。金平糖のような形や砂状のもの、球形のもの等、結石の形状は様々です。
胆嚢結石症は10人に1人という頻度で認められる一般的な疾患です。 そのうち症状のある胆嚢内結石症や急性胆嚢炎に対しては、腹腔鏡下胆嚢摘出術という手術治療が推奨されています。
この腹腔鏡下胆嚢摘出術は、胆嚢腺筋症、胆嚢ポリープなどの良性の疾患や早期胆嚢癌に対しても用いることのある手術の方法です。
胆嚢摘出手術について
多くの場合、腹腔鏡下胆嚢摘出術を行います。
腹腔鏡下胆嚢摘出術とは、腹部に3~4ヶ所の穴をあけ、その穴から内視鏡(カメラ)や手術器具を挿入し、テレビモニターでお腹の中を観察しながら胆嚢を摘出する手術です。 従来の開腹手術に比べ、身体への負担は軽く、手術創が小さい分術後も早期回復が見込めます。
なお、決して簡単な手術ではありませんので、この手術特有の合併症があることも理解しておく必要があります。 胆嚢の炎症が強すぎたり、お腹の中の癒着が強い場合など腹腔鏡手術が向かない場合は、開腹手術に切り替えることもあります。 最近では単孔式手術で行うことが多くなっています。
単孔式(たんこうしき)胆嚢摘出手術とは
通常、腹腔鏡下胆嚢摘出術では、腹部に3~4ヶ所の穴をあけますが、単孔式手術では臍(へそ)の辺りにあけた2cm程度の穴から手術をします。 鉗子の稼動範囲に制限がある分、より高度な技術が求められますが、術後の身体への負担もより軽く、手術創の跡もほとんど目立ちません。 困難な場合に5mm程度の傷を追加することがあります。また、通常の腹腔鏡手術と同様に胆嚢の炎症が強すぎたりお腹の中の癒着が強い場合などでは開腹手術に切り替えることもあります。
腹腔鏡手術の利点
腹腔鏡手術(単孔式を含む)には次のような利点があります。
- 手術創が小さいので身体への負担が少ない
- 痛みが少ない
- 早期回復が見込まれる
- 手術創の跡が判りにくいため美容的にストレスが軽減される
- モニターで拡大できるので細かい処置が可能
合併症への対応
腹腔鏡手術から開腹手術への移行
以前の腹腔内手術や腹腔内の炎症の影響で癒着が認められる場合や出血があり止血が難しい場合には腹腔鏡下手術を続けると危険性が高くなります。 また、胆道損傷のような合併症もあり得ることから、開腹手術に切り替えることがあります。
手術後の合併症
腹腔鏡、開腹手術ともに、胆汁漏出、胆管への落石、腸閉塞、腹壁瘢痕ヘルニアといった合併症を発症した場合、それぞれの合併症に対して処置が必要となることがあります。
その他
手術についてお一人おひとりの状態を確認し可能性のある合併症や出現した合併症について説明いたします。 分かりにくい点、不安に思われる点があれば、しっかり主治医にご確認ください。入院期間は、通常3~5日程度です。患者さんの経過にあわせて調整いたします。 退院後は、外来で診察をさせていただくと同時に、病理結果(摘出した胆嚢を顕微鏡で検査した結果)をご説明いたします。