特色
侵襲の少ない心臓カテーテル検査と治療
近年、生活習慣の欧米化により狭心症や心筋梗塞が急増しており、比較的若い世代からメタボリック症候群や動脈硬化が始まり、狭心症、心筋梗塞を発症する例も少なくはありません。これらの心血管病は日本人の死亡原因の第2位と現在でも致死率の高い危険な疾患であり迅速かつ適切な診断・治療が必要です。
心臓カテーテル検査では心臓の筋肉に血管を供給する血管(冠動脈)の状態を知ることができます。検査では、局所麻酔薬を注射後、手首の血管や足の付け根の血管に細いカテーテルを動脈内に挿入します。X線透視を確認しながらカテーテルの先端を冠動脈の入口に入れ、造影剤を注入し血管を造影します。様々な方向から撮影することによって、血管の狭窄の有無をチェックします。当院ではできる限り、術後の安静仰床が不必要な手首の動脈からのカテーテル検査・治療を行っております(透析患者さんや腕の血管の蛇行がある患者さんでは手首の動脈からのアプローチが困難なこともあり、入院前に主治医がカテーテルのアプローチを決定します)。
動脈硬化により狭くなっている(狭窄)、または詰まっている(閉塞)血管を風船付きのカテーテルで拡張したり、ステントと呼ばれる金属の網状の管を留置することで血管を十分に拡張して治療をする方法です。近年ではステント留置後の金属の部分が再び狭窄し、繰り返し治療を要するステント内再狭窄を予防するために、薬剤をコーティングしたステント(薬剤溶出性ステント)や風船(薬剤溶出性バルーン)が使用され、再狭窄は劇的に減少しております。また、狭窄や閉塞の数や場所、患者さんの状態によっては冠動脈バイパス手術が必要なことがあり、心臓血管外科のある病院に紹介させていただくこともありますが、カテーテル器具の発達により、多くの病変は心臓カテーテル治療が可能となっています。当院では経験豊富な医師により年間約200件の心臓カテーテル治療を施行しております。
冠動脈内圧測定(プレッシャーワイヤー)
狭心症に対する心臓カテーテル治療は、高度な狭窄病変や胸痛などの症状の原因となり得ると判断される病変に対して行われます。しかし、糖尿病や高齢者では狭心症による症状を自覚されないこと(無痛性心筋虚血)も多く、狭窄の程度が微妙である場合、治療適応の判断が困難なケースも存在します。ステント留置後はステント血栓予防のために、血液をサラサラにする薬(抗血小板剤)を一定の期間は2種類、その後は永続的に1種類を内服することが必要になりますので、不必要なステント留置は避けられるべきであり、より正確な狭窄の評価が求められます。
そこで、冠動脈造影後に、プレッシャーワイヤーと呼ばれる圧を測定できる装置を冠動脈内に挿入することで、狭窄病変によってどのくらい血流が阻害されているかを推測し、より科学的に治療の適応を判断することが可能となりました。当院でも治療の判断に迷うケースでは積極的にプレッシャーワイヤーを使用しており、なるべく「不必要なカテーテル治療」を避けるよう努力しております。
- なお、プレッシャーワイヤーでの測定時に冠動脈拡張剤の使用が必要であり、その副作用のため、喘息の既往がある、あるいは喘息の治療中の患者さんは当検査を行えないことがあります。検査前の問診などで確認させていただきます。
血管内イメージングカテーテル
先端に超音波の付いたカテーテル(IVUS)を血管内に挿入し観察することで、安全に狭窄度、病変の長さやプラークの性状などの正確な評価が可能です。これにより腎臓に負担のかかる造影剤の量を軽減させることができ、治療適応の決定のみならず、ステントの選択、より正確な留置に有用です。当院でも検査・治療の際には積極的に使用しております。
このように心臓カテーテルに用いられる器具は日進月歩であり、安全かつ正確に診断・治療を行うことが可能となっております。当院でも、少しでも患者さんの負担の少ない、正確な診断・治療を目指して日々、診療に当たっております。365日24時間体制で心臓カテーテル検査・治療を施行可能であり、心筋梗塞など緊急を要する症例にも対応しております。
恒久的ペースメーカー
徐脈性不整脈に対するペースメーカー植込みを行っております。徐脈性不整脈とは1分間の心拍数が50回以下になる不整脈です。加齢や心筋障害などによる刺激伝導系の機能異常が原因で発生し、具体的には洞不全症候群や房室ブロック、徐脈性心房細動などが挙げられます。立ちくらみや失神などの脳虚血症状が出現する場合にはペースメーカー植込みの適応となります。
ペースメーカーは本体(電池とコンピューター)と電線(電極リード)から構成されます。手術は局所麻酔で行い、本体は通常、胸の皮下に本体が十分入るくらいの空間(ペースメーカーポケット)を作って収納し、電線は鎖骨の下を通っている静脈内に挿入して心臓内に留置します。大部分の方は約1~2時間程度で終了します。
植込み型ループ心電計
いつ起こるか分からない失神や、潜因性脳梗塞の主な原因の一つと言われる心房細動は、一般的に行われているホルター心電図検査や体外式ループ心電計による検査では記録時間が短く、検出が難しいことがあります。植込み型ループ心電計を使用することで、失神が起きた際の不整脈の有無を確認したり、潜因性脳梗塞患者さんに心房細動があるかを調べたりすることができます。
植込み型ループ心電計は非常に小型なスティック状の機器で、胸部の皮膚を1cmほど切開し、皮膚の下に挿入(植込み)して使用します。植込みは局所麻酔下に約10~30分間で終了します。
遠隔モニタリングシステム
ペースメーカーやループ心電計の植込み後は自宅に専用の機器を置いていただき当院のデータセンターをリンクし、睡眠中に自動的にデータを送信します。
受診をしない月も含め、主治医が最低1ヶ月ごとにデータをチェックしており、新たな不整脈や故障などの緊急事態があれば、速やかに患者様へ連絡し、早期の受診につなげます。
当院では早期よりこのシステムの利用を開始し、頻繁な受診が難しい患者様にも安心ときめ細やかな治療を提供しております。
最新3D経食道心エコー装置を用いた心臓の観察
経食道心エコー検査は、先端に超音波の送受信機がついた胃カメラのような細い管(プローブ)を飲み込んでいただきます。体表面から行う経胸壁心エコー検査と比較して、経食道心エコー検査は心臓のすぐ後ろにある食道側から心臓を観察するため、骨や肺などに邪魔されることなく詳細な観察が可能です。
特に心臓の弁の状態の評価や心臓の中の血栓(血の塊)や腫瘍などの異常構造物の有無に関して調べる場合にはきわめて有用な検査です。スムーズに飲み込んでいただくために、ゼリーおよびスプレー式のお薬で喉の奥を局所麻酔します。また、飲み込む際の苦痛が大きい患者さんには鎮静薬の静脈注射の併用も考慮いたします。当院では最新3D経食道心エコー装置を導入しており外来・入院を問わず検査を行っています。