肩の痛み ―腱板断裂の診断と治療―
肩の痛みや可動域制限でお困りの方が医療機関を受診されると、多くの方が五十肩あるいは肩関節周囲炎と診断され、 リハビリテーションなどの保存療法が行われます。 肩関節周囲炎とは解剖学的な異常が見られないものと定義されていますが、就寝時にも強い痛みを感じて睡眠不足になったり、 物をもちあげたり着替えたりといった日常生活動作において痛みが生じ、不自由を感じておられる場合には、腱板断裂を疑うことがあります。
腱板が断裂すると腕を動かす際に痛みを生じるようになります。
腱板断裂は珍しいものではなく、50歳台の13%、60歳台の25%、70歳台の45%には腱板断裂があると報告されています。 腱板断裂が大きくなると肩が挙がらなくなる場合もあります。腱板断裂は自然治癒せず、その40%は徐々に断裂の大きさが 拡大していくと言われていますので、早期の発見、治療が大事になります。
腱板断裂の診断は単純X線では困難ですので、当院での診断には超音波検査とMRIを用います。 精度の高い診断を行うことで、患者様に適切な治療の選択肢を提示することができると考えています。
保存療法で症状が軽減しない場合は手術療法を行います。当院では数カ所の小さな傷で可能な関節鏡視下手術をお勧めしています。 傷が小さいだけではなく、筋肉に与えるダメージが少ないため術後の痛みが少ないといったメリットもあります。
手術の方法には腱板修復術、上方関節包再建術、リバース型人工関節置換術といった様々な術式がありますが、 腱板断裂の重症度に応じて手術方法を選択します。 手術後3 – 4週間は着脱可能な外転装具を装着し、リハビリテーションを行います。 術後2, 3ヶ月で軽作業、6ヶ月で重労働可能となります。