高齢化が進む地域を支える救急医療
高槻赤十字病院は24時間・365日体制で救急診療を行い、高度な医療処置もとり行う急性期病院です。長年に渡り、高槻市・茨木市を中心とした、地域の救急医療を支えてきました。近年では地域の高齢化に伴い、ますます高まる救急医療の需要に対応しています。
【救急科】ドクターインタビュー 中村 保清 医師
病院の特長を活かし、高齢者の救急医療を幅広く行う
―救急医療の患者さんは、どのような方が多いのでしょうか?
もともと高齢者の多い地域なので、年齢層でいうと高齢者が大半です。近年、高齢者の増加につれ虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)は増え続け、3大死因の1つになっています。当院でも、心疾患循環器系の緊急カテーテル手術や検査を行うことができますが、高齢者は特徴的な胸痛ではなく、息切れ、吐き気などの消化器症状で発症することも少なくないため、あらゆる可能性からの判断が求められます。
消化器系は、吐血や下血・血便などの消化管出血(胃・十二指腸潰瘍や食道・大動脈瘤破裂、大腸憩室出血など)に対しては、緊急内視鏡および内視鏡的止血術を常時行なっています。
また、私が呼吸器内科を専門にやっていたこともあり、新型コロナウイルスによる症状は比較的迅速に判断と処置を行うことができると考えています。新型コロナウイルスについては、日本赤十字社和歌山医療センターに次いで関西では2番目に多い患者さんの受け入れをしてきました。病院一体となってコロナに向かってきたノウハウもあるので、これからの時代において一つポイントになってくるのではないかと思います。他の呼吸器の症状でいうと、肺炎、気管支炎なども多いですね。誤嚥性肺炎や尿路感染も年々増加しているように思います。
他にも年々多くなっていると感じるのは、高齢者の転倒です。骨折していることもありますので、整形外科の医師と連携して対応し、手術や入院の有無などを判断していきます。
―救急医療において、高槻赤十字病院ならではの強みは何だと思われますか?
高槻赤十字病院では、オンコール体制(※1)を整えており、24時間365日患者さんを受け入れております。また、当院の強みは、診療科ごとの垣根が低く、連携が取りやすいということがあります。私もこの病院に長く勤めておりますので、他各科の医師と密にコミュニケーションをとりながら、連携して治療を行っています。病院の規模的にも当院の救急はファーストコンタクトの役割として、橋渡しの役割が大きいと考えています。
例えば、救急搬送で運ばれる前に明らかな症状や検査の必要性が分かっている場合は、事前に症状の説明と対応の依頼の電話をしておくなど、チーム医療の観点から見ても、フットワークが軽く、患者さんファーストな医療の提供が実現できているのではないかと思います。
高齢者ならではの特徴や状況を見極め、入院など臨機応変な対応も
―高齢者の医療に当たる上で、注意している点は?
高齢者の救急は、「ここが痛い」という症状があまり見られず「なにか様子がおかしい」「いつもと様子が違う」という症状で来られるパターンが多いことに特徴があります。
ですから、病院に運ばれてきたらまずは全身を診察し、明らかに異常が出ているところがないかを診ていきます。そして血液検査・尿検査・レントゲン検査・心電図検査を一通り行います。もちろん何も異常がないこともあるのですが、その場合でも様子を見ながら入院していただくパターンもあります。ぐったりしている、意識がない状態のときも診察や検査をして、迅速・的確な判断で専門医と連携していきます。
―救急で搬送されて入院まで直結されるパターンは珍しいのでは?
高齢者の多い地域性もあるかと思いますが、当院ではウォークイン(※2)で受診される方も半数以上いらっしゃいます。もともと施設に入られている方が発熱や体調の異変などで診療科を受診した後、救急に入られることもあります。
診察や検査をして、CTを取ったら腹膜炎や大動脈解離があった、なんてこともありますし、抗がん剤治療をしていて、副作用などの症状が軽度でも発症した場合、入院して様子を見ることも多いです。
当院ではいつでも入院できる環境を整えていますので、高齢者の方でも安心して来ていただける病院だと言えます。
―これまで入院された患者さんにはどのような方がいらっしゃいますか?
患者さん宅では「これ以上介護ができない」ということで、入院していただくことが多いですね。患者さんが高齢者の場合、そのご家族もご高齢なことが多くあります。
老老介護などの言葉にもなりましたが、時代とともに家族の形や年齢などが移り変わっているので、単純に患者さんだけの問題ではなく、地域医療としてどのようにサポートしていくかということが課題だと感じます。そういった状況の中で、いつでも入院することができる当院の環境は、患者さんやご家族の皆さん、地域にとって安心できる環境でもあると思っています。
―地域医療を担う救急病院として、周辺の病院との協力体制は?
転院などのケースでお世話になることや、反対に当院に受け入れるケースも多いです。当院には心臓血管外科や脳神経外科が無いので、脳内出血や大動脈瘤破裂だとほかの病院への転送を依頼することが多いですが、循環器や呼吸器の場合は受け入れをしています。高槻市には多く病院があるので、それぞれの病院の特長を生かしながらお互いに協力し合い、高水準の医療を提供しています。
また、高槻市内だけでなく、吹田市や茨木市などからも多く受け入れがあります。特に茨木市は立地的にも近く、その一方で救急医療が万遍でないという現実もありますので、地域の救急医療を支える医院として、ある程度のことは何でもできるよう、より環境を整えていくことが大切だと考えています。
インタビュイー
【救急科】 中村 保清 医師
※注釈追記※
- 1 オンコール体制…医療従事者が患者さんの急変時や、救急搬送時に勤務時間外であっても呼ばれればいつでも出勤できるように待機していること
- 2 ウォークイン…緊急外来に徒歩・自家用車などで直接来院して受診する患者さん