男性看護師
座談会

様々な理由や想いをもって、看護を実践する
男性看護師として、医療現場の最前線でできること

お名前 Yさん

看護師歴 18年

お名前 Sさん

看護師歴 17年

お名前 Hさん

看護師歴 12年

現在のキャリアに至るまでのそれぞれの歩み

ー入職の理由を教えてください。

Yさん 僕は小学生のころから看護師を目指していて、日赤の看護専門学校を卒業してこの病院に入職し、16年経ちました。なりたかった職業だったこともあってやりがいもひとしおでしたが、実は看護師になって11年目に、一度辞めているんですよ。その後、1年半後に再入職しました。退職の理由は、入職してから10年ほどHCU(高度治療室)にいたんですが、自分の知識不足や無力さを感じることが多く、患者さんにいい看護ができないジレンマがどんどん大きくなって、疲れを感じてしまって。自分が良いコンディションでないと、患者さんに良い看護を提供することも難しいこともあると考えて、一度休んで他の業界を見てみるのもいいかなと、飲食店などのバイトなどをして生活していました。ただ、ほかの仕事をすればするほど、自分には看護があっていると、看護の仕事のやりがいの大きさを改めて認識できたんです。当時、親身になってくれたこの病院の師長さんからお声がけいただき戻ることを決意しました。今は消化器外科と整形外科の混合病棟にいます。

Sさん 母親と叔母二人が看護師で、小さいころから母の勤める病院が保育園がわりの存在で。曾祖父を在宅で看取ったんですが、医療職の方が最期までよくしてくださって、自分も看護師になろうと決意し、ここに入職しました。高槻赤十字病院は緩和ケアでも有名でしたし、ぜひそこに関わりたいと思ったのが決め手でしたね。ただ、入職して配属されたのは循環器・泌尿器・内科の混合病棟でした。当時の緩和ケアは看護師経験が5年必要なこともあり、急性期の病棟に配属されたんです。入職時に泌尿器科の先生に疾患や病態など細かく教えてもらって、勉強するうちに急性期看護が好きになりました。特に印象深いのは僕が初めて夜勤の時に、今日この人患者さん一人で頑張ってみてみようと言われ、当時3年目の循環器の先生といろいろ勉強しながら、患者さんのケアができて患者さんを助けることができたという経験でした。急性期医療は介入すると患者さんの反応がすぐあるので、成功体験も失敗体験も積み重ねていますが、いまでもその患者さんのことは覚えています。

Hさん 僕は高知生まれで、親戚に医療関係者がいたわけではないのですが、祖母を在宅で20年近く介護したので医療や介護が身近な存在でした。中学と高校の職業体験もなんとなく地元の病院で、自然な流れで看護師になった感じです。看護専門学校卒業後の2010年、岡山赤十字病院に入職。最初の配属で救命救急医療センターに3年間勤務しました。救命救急医療センターに運ばれてくる患者さんは重篤の人が多く、1分1秒を争う治療は非常に刺激的で使命感を感じる仕事ではありましたが、逆を言えば患者さんから看護についてのフィードバックがほとんどない自分のケアはこれでいいのか、どういうケアが適切なのかと模索し、すごく苦しい時期があって、一般病棟で学び直そうと決意し、以前から興味があった血液内科のある高槻赤十字病院に異動しました。現在は内科と外科の混合病棟に勤務しています。

それぞれの立場から見る
三者三様のターニングポイントとそれぞれの道

-現在、力を入れて取り組んでいることは何ですか。

Hさん 私は現在大学院に通い、病院経営等のヘルスケアマネジメントについて勉強をしています。卒後9年目で看護係長を拝命して今に至りますが、管理者になる前の私はトップダウンで指示を出していることが多かったように思います。知識も経験もなく、後輩をどうリードすればいいのか、現場で一緒にやるにはどうしたらいいのか見当がつかなくて、自分でもやり方を模索していたんだと思います。これまで数名の師長と働く機会がありましたが、管理者が変わるたびに病棟の雰囲気も業務体制も大きく変化しました。「師長や係長をフォローしたい」とスタッフに自然に思わせるマネジメント力と人間力があり、「管理者で組織は変わるんだ」と肌で感じた体験が、マネジメントの勉強を始めるきっかけになりました。

はじめは意識的なマインドセットをすることからはじめました、半年くらい経って、スタッフとの関係性が良くなったと感じて、改めて師長の実践していることのすごさを認識し、人間力の鍛え方もマネジメントの奥深さにも気付きました。今は常に利他的であることを心がけています。みんなが気持ちよく仕事ができるようになってほしいし、スタッフがやりたいことを実現できる現場にしたい。そのために頼まれたことはまずイエスで引き受けるのが今の自分のモットーです。大学院のクラスには企業の社長、部長クラスの方も多く、優れたリーダーシップを持ち人間力にあふれた人との出会いもあります。病院では出会えないような異業種の人とのかかわりは新鮮ですし、吸収するものも多いですね。何より出会いが大きな財産です。大学院のために毎週末は病院からお休みをいただいていますが、看護部長はじめ看護師長やスタッフも快くバックアップしてくれています

Yさん 僕も病棟での係長を復職後につとめており、マネジメントに取り組んでいます。係長になってからは、スタッフ管理や働きやすさなどを業務と並行して考えるようになりました。正直今は、どこの病院も看護師不足で、仕事に追われ患者さんに関わる時間が取れず、思い通りの看護ができない実情があります。業務を改善し、スタッフが理想の看護を患者さんに提供できるよう職場環境を整えたいと強く思ったのは管理職になってからですね。同じ管理職の師長さんたちの持つ苦労や大変さも実感できましたし、師長さんとスタッフ両方の気持ちが分かる立場に立ち、業務では患者さんと関われているので、毎日充実しています。わたしは自分自身の経験から、どんなに知識があってもスタッフに余裕がないと、いい看護はできないと考えています。業務も精神的にも限界ぎりぎりでは患者さんとの関わりや、自己研鑽の時間も作れない。看護師はいち早く患者さんの変化にも気づき対応しないといけない立場でもあるので、精神的な余裕は良質な看護を提供できるかどうかにも関わってきます。口で言うのは簡単ですが、そのあたりをどうやってスタッフに伝えていけばいいのか、悩みますね。

僕が係長になってから3人の師長を経験し、管理職には決まったものがないと実感したのもそのタイミングでした。患者さんによい看護を提供するという目的は同じですが、それぞれやり方や考え方があり非常に興味深かったですし、その中で良いと思った部分を実践していきたいです。私は優しすぎると言われるのですが…一つの型にはまらず、いろんなマネジメントのやり方を経験し、私なりの方法を見つけ、みんながやりがいをもって、たのしく看護ができる環境づくりを目指していきたいと考えています。

Sさん 僕は2020年に集中ケア認定看護師を取得しました。研修を受けていく中で、医療者の自己研鑽は当然のことであり、認定看護師の役割は自分だけじゃなくスタッフの知識や技術の底上げをフォローし、組織に貢献することだと認識が切り替わりました。これからは認定の知識を基にスタッフの教育や指導に取り組み、患者さんへのチームケアを向上させることに重点を置いていきたいと考えています。

また当院はHCU(高度治療室)のため、日中は主治医、夜間は当直医師で、稀に先生たちが他の急患に当たっていると、患者さんにその時必要な処置やケアがタイムリーにできないことがあります。認定研修で得た知識で「この処置やケアを今行えば、患者さんはもっとよくなるのに」と歯がゆい気持ちになることがあります。そのため、診療の補助業務である特定行為の資格を取得したいと考えています。そうすることによって、患者さんの状態変化を見極めた、よりタイムリーな医療の提供ができると考えていますし、近い将来の医師業務のタスクシフトなど働き方の問題からも、看護師がそれぞれの専門性を高めて特定行為ができることや専門的な知識を取得しているというのは病院としても強みになりますから。

Hさん 僕ら三者三様ですけど、結構仲はいいんですよ。お互いに、それぞれの立場や目標がはっきりしていて楽しく働いています。僕らのほかにも男性看護師も多いので、困りごとなど相談しやすいといったフォローアップもしっかりしていると思いますね。

入職前のイメージとして、看護師は女性の職場だとイメージされる方もいるかもしれませんが、看護師はどんな病棟でも、あらゆる職種と連携して仕事をしますし、患者さんのために素直に働ける環境です。この病院は、看護師に限らず、性別に限らず、多様性を認め合って仕事ができる職場ですし、医療現場はそうでなくては成り立たないとも思っています。

看護部や病院を底上げするために、できること。
それが何より患者さんや地域のためになる。

-これからの目標を教えてください。

Yさん 僕はまずは今の師長の下でしっかり学ばせてもらい、いずれは管理職で上を目指したい。職場を改善して、病棟全体ゆくゆくは組織全体で向上していきたいですね。どういう病棟が患者さんにもスタッフにも最善なのか、いつも考えています。管理職としての自分のやり方を見つけることが一つの目標かもしれません。現在の時点でのモットーはスタッフの意見はしっかり聞いて、頭から否定は絶対にしない。スタッフが委縮するのが一番嫌なんです。自由に意見を交換できる病棟、風通しのいい職場にしたいですね。

Hさん 僕もYさんと同じく係長職は3年くらい。大学院で学んでいることは非常に理論的ですが、それをどう現場と融合させるかが大きな課題ですね。理論は決して机上の空論ではなくて、それを実践できている病院はありますから、当院でもできるはずです。高齢者が非常に多い高槻に根差して80年、ここ数年コロナ診療で存在感を示せた部分はありますが、もっとたくさんの分野で地域に貢献することができるはず患者さんと一番近い現場のスタッフに病院の存在意義や理念を落とし込み、体現化させていくのが管理職の力の見せどころ。職位が上がるにつれて解決すべき大きなミッションになると思います。

Sさん この病院の特徴の一つに「垣根が低い」ということがあります。それは診療科をはじめ医師と看護師だけでなくて、臨床工学技士やリハビリの専門職の方々、放射線の技師などありとあらゆる職種との連携がとてもスムーズで行いやすいです。患者さんの救命や状態改善だけでなく、早期の離床リハビリテーションや経腸栄養など患者さんの状態が変化しやすい急性期だからこその迅速なケアが行えるように、連携のしやすさや繋がりを意識しながら、患者さんのための医療や看護を提供できればと思います。認定看護師の役割として意識している、看護師全体のスキルアップにも協力していけるように励みたいです。